前橋温泉の歴史

前橋温泉クア・イ・テルメ 源泉名 「医王薬師の湯」は1996年に掘削によって湧出した、前橋市で初めての天然温泉です。前橋市関根町にあった滝澤整形外科医院院長、滝澤幸男 により掘削されました。整形外科医であった滝澤は、以前より、温泉の体に及ぼす効果を腰痛や膝痛など、痛みのある人のリハビリに使えないかと考えていました。

医院のあった場所が前橋市の区画整理対象になり移転することとなり、移転先に温泉を掘ることを考えます。地質調査などを経て、95年に温泉掘削に着手しました。途中800mほど掘り進んだところで水脈に到達しましたが、温度が25℃以下で、温泉の定義に当てはまりませんでした。(「温泉法」により温泉の定義が定められています。)
さらに掘り進めて、1500mの深さで現在の湯脈に到達しました。湧出量が多く、自噴でもかなりの量が出ていましたが、温泉を汲み上げる量が法律で定められているため、汲み上げポンプを設置して湯量を調節しています。 

1999年に滝澤整形外科医院が現在の場所に移転し、1階が整形外科、2階が天然温泉という、全国でも珍しい施設が誕生しました。温泉を掘る前は患者さんのリハビリに使うことを考えていましたが、誰でも利用できる日帰り温泉としてオープンしました。外観が普通のビルで、温泉らしくないこともあり、いわゆる「温泉病院」とまちがえられますが、通常の日帰り温泉施設です。

2006年には同じ建物内に前橋温泉クリニックが開業しました。アンチエイジング医学(老化や病気を予防し、寝たきりや認知症にならずに過ごすことを目標としている医学)の考え方をコンセプトにしたクリニックで、温泉の免疫を上げる効果や自律神経バランスを保つ効果などに着目して温泉を利用した湯治やダイエット合宿なども行なっています。

2019年には2階のロビーに、「糀とお野菜の小さな台所 キッチン風の穂」がオープンしました。川島康弘シェフとによる地元農家の有機野菜を使った料理はアンチエイジングのコンセプトにぴったりで、「温泉」「食」「医療」と、体のことをケアする時間を過ごすのに最適の場所になりました。

2021年11月に滝澤は87歳の生涯を閉じました。自分で湯量の調節をしたり、浴槽の壁を磨いたりと、医王薬師の湯をこよなく愛していました。ちなみに「クア・イ・テルメ」の意味は、「クア」がドイツ語の治療を表す “kur” 、「イ」がスペイン語で「and」を表す ”y” 、「テルメ」はイタリア語で「温泉」を表す ”therme” からなる、滝澤が作った造語です。

2023年、施設の老朽化が進んできて、故障も多くなってきたため、温泉の配管、浴室、脱衣所、ロビーなどを中心にリニューアルを行いました。温泉のもつ心身の健康に及ぼすよい効果を伝えつつ、これからも前橋市初の温泉「医王薬師の湯」を守っていきたいと思います。